2016年 03月 30日
引き返すと、三人が乗ったミニバンは灯りを消してゲートから1kmほど入った ところに駐めてあった。バイクを積み込むと、運転を尾沢大介に代わってもらい、 行円は助手席に乗り込んだ。すでに日付が変わっていた。このあとのコースは、 昨夜の州境の大渋滞の時に研究しておいた。必要な衛星写真も、Google よりも 高精度のものを送ってもらっておいた。ウインド・ファームと牧場の中を低速で 南東方向に走り、州境から2.5マイル足らずの地点の CanAm ハイウエイに再び 出ることができた。農場内道路がハイウエイに交叉する箇所にもゲートはあったが、 扉は設けてなかった。 「向こうのゲートは、どのように開けたんだ?」 「ゲート自体じゃなく、横の杭を一本、チェンソーを使って根元から倒しました。 あらかじめ、ゲート横の草むらを歩いてみると溝もなく平坦だったので、ゲートを 迂回して通過することにしたんです。有刺鉄線は、ゲートのところで2本ずつ 短絡させてあったので、ひとつ隣の杭のところで同様に短絡させておいてから 切断しました。ゲートの左右の有刺鉄線同士は電気的には繋がっていませんでした。 倒した杭は、左右から引っ張る有刺鉄線と根元に打ち込んだ三本のボルトで支えて 元通りに見えるようにしておきました」 大介は言われなくても農場内の建物に近づくとスモールライトにして、さらに車速を 落とした。適当な場所があれば穴を掘って、3人のパソコン、スマホ、タブレットを 埋めることも考えたが、州境を越えた今、むしろ持ち帰って、モーリス・ホイーラーに 頼んだほうが、より安全に処分できると思い直した。無事、デンバーに戻ったのは、 白々と夜が明け始めた頃だ。あとのことをホイーラー夫人に託して、行円は、 ようやく深い眠りにつくことができた。
by dokofuku
| 2016-03-30 12:53
| 干戈
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